令和8年5月4日

災害によって休止が続いている美祢(みね)線の湯ノ峠(ゆのとう)駅にやって来た。山あいの闇が駅前にじわっと滲んでいる。

駅前には昔商店だったような建物と古い自販機。そのほかにも家屋が道沿いに並ぶ。

駅舎内へ。木の壁、古い窓口、時刻表、ベンチ。国鉄の匂いが残っている。

吊り下げ式の案内板。まもなく長門市方面の列車がきます、と書かれているのに、3年近く列車が来ない時間が続いている。

ホームへ出ると、線路まわりは草に飲まれつつあった。照明だけが白く浮かび、列車を待つための場所が、列車を待つ場所とは思えなくなっている。
美祢線では令和5年6月30日から7月1日にかけて発生した豪雨災害の影響により、代行バスが運行されている。鉄路での復旧は断念されたそう。

跨線橋。構内はかなり草深いのに、照明と信号はしっかり生きている。

夜に来て正解だった。湯ノ峠駅は大正10年開業。現在の駅舎は昭和18年に改築されたもの。

列車が通らなくなった駅で、信号だけが律儀に光っている感じが、かなり刺さる。

別角度からもう一枚。草、信号、跨線橋。妙な美しさがある。

ホームの駅名標。横にはベンチがあり、照明が当たっている。列車が来ていた頃なら、ここで誰かが静かに待っていたのだろう。

良い。

ホーム全体が夜に沈んでいた。

誰も座っていないのに、誰かを待っているように見える。夜の無人駅は、こういう余白が良い。

列車が来ないからこそ見えてしまう駅の表情が、ここにはあった。