【東京】中央区にある昭和5年築の木造旅館、大宗旅館に宿泊!

令和5年2月16日

大宗(だいそう)旅館

東京都中央区築地7丁目に、昭和5年に建てられた木造2階建旅館が現存している。前々から気になっている宿であったが、現住地は札幌で、川崎に実家があるため、東京に泊まるという機会がなかなか得られないままでいたが、会社での東京への出張が決まったため、いい機会であったため、こちらのお宿に泊まることにした。インターネット予約はなく、電話での予約であった。築地という立地であるため、付近は背の高いマンションが林立しているが、90年以上前からこの地に建つ旅館は、その中に埋もれているように存在している。昔のこの町の姿を偲ぶことができるのは、ここ大宗(だいそう)旅館しかないといっていいほど、町は様変わりしているが、昔のこの町の姿を今にも伝えてくれる、貴重な建物でもあるのだ。
玄関をガラガラと引いて中に入る。予約をしていた者だと伝えると、奥から80歳ほどのおかみさんが出ていらした。
廊下を進む。
本日のお部屋は2階にある。
階段を上ると、少しばかりの廊下が伸びており、
その先に、本日のお部屋がある。冬の訪問であり、北海道の降雪状況によっては飛行機が飛ばないかもしれないと伝えていたが、問題なくたどり着くことができてほっとした。「この部屋は寒いですよ」とマッチで火をつけて部屋の奥にあるストーブに火を灯した。何時製のかはわからないが、それほど火力が無いものに見えた。それでいて、部屋の気密性は高くなく、氷点下まで気温が下がることはあまりない東京といえど、一晩ストーブを点けていても室温はおそらく10度くらいまでにしか温まっていなかった。北海道では、築3年の新しい建物に住んでいて、入り口が屋内にあって頑丈なつくりであるため、外が氷点下10度で1日暖房をつけていなくても室温が10度を下回ることはなく、ストーブをつければ簡単に20度まで室温をあげることができるのだが、こちらのお宿はストーブの火力と同じくらいに、隙間からの冷気による自然冷房が強く、あまり温まらないのだ。しかし、これはあまり気にするほどの問題ではない。炬燵があるためだ。炬燵に入っていれば、背中さえ毛布でくるんでおけば温かく過ごすことができる。そして何よりも、木造家屋という温かみが、心をほかほかにしてくれるのだ。
風が吹くたびにコトコトと音を立てるすりガラスの向こうには、築地のマンション群が見える。北海道から来たとおかみさんに告げると、北海道の方とはつながりがあったのよ、昭和末期~平成初期のお話をしてくれた。向かいのマンションが建て替わる前は北海道ぎょれんの人たちが出張でやってくる建物があったらしく、そこの部長や次長が、長い時では数か月も築地に居たそうで、その時にこの宿を使っていたのだという。夏にここに泊まりに来た時には、冷房がいらない北海道人からすると、東京の夏は冷房がなければへばってしまうということで、部長に懇願されて、部長が泊る部屋にだけ冷房を設置したのだという。そしたら案の定、次長以下から羨ましがられる声がいくつも上がって参ったという。もうコロナだって世間が騒ぐ前のうんと昔の話だけですけどね。今はその建物もなくなって、別のところに泊まっているのか、このご時世だから出張自体がなくなっているのかもわからないですけどね。と、少し寂しそうにお話しされていた。

そして参っていることといえばもう一つ、周辺の建築の影響によって建物が歪んできているということだ。背の高い建物を建てるということは、その分地面に長い杭を打つ。建てるだけなら良いが、立て直しの際は抜いてまた差しなおしたりが繰り返されるため、だんだんと地盤を伝ってこの旅館にも影響が及び、少しずつゆがみが生じ、柱と扉との間などに隙間が生じてきているという。これ以外にも水道管も鉛管だから、振動で壊れてしまうが工事者や水道局によって保障や修繕をしてくれるわけではなく、自腹を切ることしかできないのだという。生じた隙間は、根本を直すことはできないので隙間を埋めてごまかすしかないとも仰った。どこにもぶつけられないもやもやがあるのだ。

おかみさんとのお話をし、館内の撮影許可を取り、一人の時間を持った。
まずは夕飯。
布団。そのままでは冷たいので、電気行火(あんか)を用意してくれていた。
部屋全貌。
ストーブを使うためのマッチ。
散策してみよう。ほかにも2組宿泊客がいたが、それぞれ静かに過ごされており、物音は何もしない。
洗面所。給湯器はなく、朝、顔を洗うのに大変苦労した。
手前に、装飾が施された階段の手すりを入れてみる。
スイッチ。
3回七日屋根裏なのか不明だが、急すぎる階段が奥にあった。
さて、部屋に戻って炬燵で暖まろう。
朝起きて、窓を開けた。気温は1度。凛とした寒さが、頬を襲う。
瓦屋根が、近代的なマンションに向かっている。
朝の洗面所は。夜と違った雰囲気だ。
自分が一番遅くの出発だったため、ほかの部屋も写真を撮らせていただいた。
一番広いお部屋。奥には広縁があり、高級感があるお部屋だ。
ここが東京都中央区であることは、広縁の先の窓に映る近代マンションによって気づかされる。そうでもなければ、ここが東湖湯の中心にある空間だと気づくのは至難の業だろう。
広縁。
雰囲気好き好き大好き畳のお部屋。
素晴らしい、というしかない。これぞ純和風旅館の正当なお部屋、というたたずまいだ。
外に出る。見上げると、この建物だけがどっしりと昔から変わらないでいることがひしひしと伝わる。
これから先もずっと、残っていてほしい宿だ。本社への出張の時は、築地駅から一本で行けるところにあるので、これからここに泊まろうかしら。
以前の東京出張の際に泊まった旅館西郊といい大宗旅館といい、昔から続く歴史ある旅館は、どうして心を奪われてしまうのか。それは、この宿に泊まるとわかるかもしれない。素泊まり一泊6000円也。
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