令和8年9月21日

赤怒谷トンネルの脇から、梓川沿いに残る旧道へ。入口の銘板を眺めたあと、道の奥へ目を向けると、木々の間から白い湯気が立ち上っていた。今日は旧取入隧道と赤怒谷温泉を見に来たのだが、隧道に着く前からもうわくわくが止まらない。
この道は、現在の赤怒谷トンネルに対応する国道158号の旧道だ。川に沿って曲がる短い区間に、洞門と温泉の風景がぎゅっと詰まっている。



歩き始めてすぐ、道端からも川沿いからも、もくもくと湯気が上がっていた。足元には舗装の名残があり、そのすぐ横を勢いよく水が流れていく。緑の谷、荒れた路面、白い湯気。視界に入るものの組み合わせが、いちいち面白い。


梓川をのぞき込むと、岩の間を白い流れが駆け抜けていた。川べりには色の異なる岩肌や、水のたまったくぼみも見える。すぐそばで湯気が噴き出しているため、冷たそうな川の景色との落差が不思議だ。


木々に隠れるように現れたのが、取入隧道。名前は隧道だが、川側に柱と開口部が並ぶ洞門の姿をしている。額には四文字が一字ずつ刻まれていた。暗い内部へ柱が繰り返し続いていく光景に、思わず足を止める。

取入隧道は昭和39年竣工、延長98メートルと記録されている。内部ではコンクリートの柱に加え、鉄骨による補強も見られた。開口部から入る緑の光と、奥へ遠ざかる柱列。かつて車が通った道の形を、今は歩きながら眺めている。
出典:TWな気分「取入隧道」


柱の向こうには梓川と堰が見え、洞門の出口側には白い湯気が待っている。薄暗い屋根の下からその景色を見た瞬間、旧道と温泉が一枚の絵になった。こんな場所が現道のすぐ脇に残っているのだから、たまらない。




外側から見直すと、岩壁に沿って連なるコンクリートの柱がよく分かる。内側では暗がりをつくっていた屋根も、こちらからは谷に張り出す大きな構造物だ。柱の傷みや補強材の様子に目を留めながら、慎重に通り過ぎた。

洞門の先には、配管につながった円筒形の設備。上から絶え間なく湯気が吹き出している。周囲の山を隠すほどの白さで、川音の響く谷がさらに現実離れして見えた。「もくもく」という言葉が、これほど似合う場所もなかなかない。



角度を変えても湯気の勢いは衰えず、設備と配管が見え隠れする。谷の中で、流れる水と湧き上がる湯気が同時に動いている。錆びた金属や地面に残る色まで含めて、ここだけの景色だと思った。


最後に川へ目を戻す。急な斜面に挟まれた流れの先には、さっき通った洞門が小さく見えた。隧道を探しに来たはずが、谷全体の景色にすっかり引き込まれていた。